◆輪中の農家の水屋
「輪中(わじゅう)」は川に囲まれた低地のこと。
川に囲まれた低地では、洪水から集落や耕地を守るために村の周囲を堤防で囲んでいました(輪中堤)。
それでもなお 水害に見舞われることがあり、それに備えるために様々な工夫をしていたそうです。
木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)が集まる地域に、
輪中の農家の独特の造りと知恵を拝見できるところがあります。
特に「水屋」と「上げ仏壇」の工夫と知恵には感服!
昭和初期の中流以上の農家で再現されています。
輪中の集落・輪中堤はくらしを守る
集落としてまとまって生活をしていた輪中の方たち。
大きな川に囲まれ、毎年のように水害を受けていました。
そこでこの地域に住む人たちは、集落の周りに堤防を造って水害を防いできました。
それが「輪中堤」といわれるもので、川底より低い地域を守る堤防が張り巡らされています。
それでもなお水害にあうことがあり、村の財産を守るために一部の土地を高くする、大切なものを保管るなど工夫をしています。
そのなかでも代表的なものが「水屋」「上げ舟」「上げ仏壇」です。
輪中の農家の「水屋」・保管の工夫
◆輪中の農家・水屋
「水屋」という建物には、輪中の農家の知恵が詰まっています。
石を高く積み上げたところに建つのが「水屋」。
いわゆる台所のような「水屋」ではなく、水害を避けるための貯蔵庫のような建物です。
水屋には土間・座敷・倉庫・二階倉庫がある
「水屋」は、土間・座敷・倉庫・二階倉庫に分かれています。
◆水屋の土間
土間には味噌・醤油・梅干し・飲み水などを洪水に備えて蓄えたところで、味噌部屋ともいわれるようです。
長期の保存食として欠かせないものがここにあるのですね。
◆水屋の座敷
座敷は畳を敷き、長持ち・タンス・あんどんなどを備えて、水が長い間ひかない時に寝起きする場所です。
ここを使用するときは、きっと母屋が水浸しになっているような水害のときでしょう。
◆水屋の倉庫
「水屋」の倉庫は、米・麦・切り干しいも・塩などの食料を、たわらや桶にいれて普段から備えておくところ。
二階の倉庫は「ほり込み」ともいい、普段使用しない道具などを保管しておいたところ。
「水屋」という備えは中流以上の農家はできたようですが、備えができない農家もあったようです。
輪中の農家の母屋に上げ舟・上げ仏壇が
◆輪中の農家・母屋(おもや)
輪中の農家は、水害による被害を避けるために、浸水などの前に家財の大切なものを運び出す準備がしてあります。
それが「上げ舟」と「上げ仏壇」。
母屋の間取り
母屋の間取りは、農家に最も多い田の字型。
会合など大勢の人が集まるときふすまをとって広くして使えるようになっています。
出入り口 は南東に、 土間・台所・座敷・奥(主人夫婦の寝室)・勝手(食事室)という構成です。
輪中農家の知恵・上げ舟
◆輪中の農家の母屋にある「上げ舟」
正面玄関の軒下に吊るしてあるのが「上げ舟」。
「上げ舟」はすべての農家が持っていたそうです。
洪水の時に家具などを乗せて、堤防まで運ぶために使ったそうです。
舟の幅はせまく長さは玄関の軒下におさまる程度なので、運び出せるものは多くはなさそうです。
輪中の地域は洪水が地形が平地なので、洪水が起きるとなかなか水が引きません。
避難生活が長くなり食料や水が不足してくると、舟に乗って山の方まで食糧などを確保しにいったということです。
輪中農家の知恵・上げ仏壇のしくみ
◆輪中の農家の上げ仏壇のミニチュア
びっくりしたのは「上げ仏壇」という仕組み。
ミニチュアの模型によると、仏壇の上に木を取り付け、そっくり二階にあげるというのです!
<上げ仏壇の仕組み>
仏壇の前の天井はすぐ取り外しができるようになっており、二階のはりから滑車で仏壇を上げる仕組み
本物で上げ仏壇を確かめてみました。
◆上げ仏壇本物
実際に母屋にあがって確かめてみました。
仏壇の上のすき間をのぞくと、ロープらしきもの、見えてます。
◆本物の仏壇の上にロープが
仏壇の上に丈夫そうな木がついて、天井は開いています。
ロープが上の方までつながっています。
一階の一番大切な部屋にある仏壇を、水害のときは二階に上げて守るのですね。
これが仕掛けてあるのは、中流以上の農家だけだそうです。
母屋の知恵・北と南を障子にする
「農家の造り」を知らない世代も増えていますね。
私は母方の実家で幼いころ、ちょうどこちらの農家と同じような造りの家に遊びにいったのを思い出します。
母屋の田の字型の造り
◆輪中の農家・母屋の土間と田の字型の間取り
◆輪中の農家・母屋の座敷と掛け軸
◆輪中の農家・食事するところ
向こうの土間に、煮炊きする台所(おくどさん)。
◆輪中の農家・お風呂
木を燃やして熱くするお風呂、五右衛門風呂。
子供の頃に何度か経験があり、なつかしいです。
母屋には、北と南を障子にするという知恵もあります。
それは、川の流れが北から南になっているため、洪水の時流れてきたものが壁にぶつかって家が壊れるのを防ぐため。
川の流れる方向は取り外しのできる戸(障子)として、水が家の中を通り抜けやすくしてあるのです。
輪中の農家の井戸は掘り抜き井戸
◆輪中の農家・掘り抜き井戸
輪中の農家では「掘り抜き井戸」で水を得ています。
輪中地帯は木曽川・長良川・揖斐川が運んだ土砂が積み重なってできている地域です。
その土砂の下には水を通さない粘土の層があり、その粘土層上にたくさんの水が溜まり、砂利の層の中を水が北から南に流れています。
この砂利の層に届く井戸を掘ると、地下の水が自然に吹き出してきます。
ポンプでくみ上げるなどしなくても、お水はふんだんに使えるのですね。
輪中の農家があるところ
見てきた輪中の農家は、木曽三川公園センター(所在地:岐阜県海津市海津町油島255−3)の北ゾーンにあります。
輪中に似た防水堤施設は、日本では利根(とね)川下流の水郷、有明(ありあけ)海の干拓地にあります。
輪中の郷
輪中のことを学べる「輪中の郷」
輪中のことが学べる施設「輪中の郷」が、三重県桑名市長島町にあります。
長島は、木曽三川に囲まれた細長い島で、全域が海抜(かいばつ)0メートル以下。
周りは堤防(ていぼう)に囲まれ、一度洪水が起きて堤防が切れると、大きな災害になる地域です。
輪中の郷では長島一向一揆(いっこういっき)や伊勢湾台風などの長島の歴史を紹介(しょうかい)するコーナーも。
- 輪中の郷所在地:桑名市長島町西川1093番地
- 開館時間:午前9時30分から午後4時45分(入館は午後4時まで)
- お休み:月曜日・年末年始(月曜日が祝日の場合は翌日が休館日)
- 料金:大人(高校生以上)460円、小人150円
輪中の農家:輪中堤に/水屋 上げ舟/上げ仏壇で水害から守る知恵/(岐阜県海津市)まとめ
輪中といわれる川よりも低い土地(集落)に住む方たちは、数々の水害をへて財産や身を守る暮らしを続けてこられました。
洪水にも高波にも備えなければならない、川のそばで生きてきた人たちの苦労は大変なものなのですね。
古い文書には、「江戸初期から輪中の農民は輪中単位に強固な共同体を構成。織田信長をしばしば脅かした伊勢長島の一向一揆はきわめて強固だった」との記載があります(旺文社日本史辞典 三訂版による)。
木曽三川を見渡す地域に行くと、川に挟まれた低い地域に、お米農家と水田が広がっています。
木曽三川の地域は国営で、広々とした公園や施設がたくさんありますよ。
園内には幼児向きの水遊び場、大型遊具、広場が。
◆木曾三川公園で水遊び(じゃぶじゃぶ池)/無料で楽しむ!遊具あり(岐阜県海津市)
木曽三川公園センター 所在地:岐阜県海津市海津町油島255−3 下の行のワンクリックでコピーできます。
岐阜県海津市海津町油島255−3
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