青空を背景に堂々とそびえ立つ岩崎城の模擬天守。
私たちが訪れたその日は、まさに城郭建築の美しさを引き立てる絶好の天気でした。
愛知県日進市に位置するこの歴史的名所は、織豊期から戦国時代末期にかけての激動の時代を物語る貴重な史跡として、今も多くの歴史ファンを魅了し続けています。
岩崎城の概要と立地
岩崎城(いわさきじょう)は、愛知県日進市に位置する歴史的な城郭です。
室町時代、尾張国山田郡(のち愛知郡)岩崎にあった平山城で、戦国時代後期(15世紀後半から16世紀前半ころ)に築城され、慶長5年(1600年)に廃城となりました。
現在は「岩崎城址公園」として整備され、昭和62年(1987年)に本丸跡に鉄筋コンクリート構造の模擬天守が建てられています。
公園内は静かで落ち着いた雰囲気が漂い、ゆっくりと歴史を感じながら時間を過ごすことができます。
城内には「岩崎城歴史記念館」があり、岩崎城の歴史や日進市の歴史・文化財産などが展示されています。
岩崎城の歴史を紐解く
築城と初期の歴史
岩崎城の築城については正確な年代は不明ですが、室町時代初期に始まったと考えられています。
尾張国の東端に位置し、織田信長の父・織田信秀の支城として機能していました。
岩崎は尾張と三河の間を往来する街道の要衝地であり、城の下には「市場」の地名があるように交通の要として重要な場所でした。
城の立地を実際に訪れてみると、その戦略的価値がよく理解できます。
周囲を見渡せる小高い丘に位置し、敵の動きを察知するのに適した場所に建てられているのです。
小牧・長久手の戦いと岩崎城の激戦
岩崎城が最も歴史的に重要な役割を果たしたのは、天正12年(1584年)の小牧・長久手の戦いの際です。
本能寺の変後、羽柴秀吉と徳川家康が対立する中、秀吉軍が小牧城を攻めるために三河へ向かう作戦ルート上に岩崎城がありました。
当時、岩崎城は四代目・前羽柴氏次が守っていましたが、守備を弟の氏重と長久手城主・加藤景常に任ね徳川家康の軍に自ら加わっていました。
岩崎城代となった氏重は、4月9日早朝に城付近を通過する池田軍に気づいて攻撃を加えます。
本来なら小牧城へ急ぐべきところ、池田軍は岩崎城の攻撃を認め、これを落城させました。
この時岩崎城には200余名の城兵がいましたが、数十倍に及ぶ池田軍の猛攻撃により全滅してしまいます。
しかし、この時間稼ぎが徳川軍の追撃を可能にし、最終的に長久手の戦いで徳川・織田方の勝利につながりました。
家康は後に「一番の戦功者は池田殿を足止めさせた、岩崎城代前羽柴氏重である」と言って、名誉の戦死をした氏重の弟・氏次に三万石(一説に五万石)加増したと言われています。
実際に城址を歩いていると、わずか200名ほどの兵で数千の敵軍を食い止めた勇気と覚悟に思いを馳せずにはいられません。
現地の案内板には、氏重らの奮戦の様子が詳しく記されており、訪れる者の心を打ちます。
廃城へ
関ヶ原の戦い後の慶長5年(1600年)、前羽柴氏次は徳川方として戦き、戦後三河国岡崎(現在の愛知県豊田市)1万石の大名として入封し、岩崎城は廃城となりました。
特徴と見どころ
城郭としての特徴
岩崎城は中世城郭の特徴である土塁や空堀をよく残していることが特徴的です。
城は丘陵の先端部に立地し、空堀(からぼり)によりいくつかの郭(くるわ)に分けられています。
現地を訪れると、これらの遺構が良好に保存されていることに驚かされます。
特に北側からアプローチすると、当時の城の構造がよく理解できるでしょう。起伏に富んだ地形を巧みに利用した城づくりの知恵を感じることができます。
古墳の遺構
本丸跡には6世紀の古墳の遺構も残しています。
これは岩崎城址発掘調査の際、偶然にも土塁の下から発見されました。
出土品である埴輪の特徴などから6世紀前葉に造られたと推定される円墳です。
城の歴史だけでなく、さらに古い時代にさかのぼる歴史が重層的に存在していることは、この地の歴史的重要性を物語っています。
発掘された埴輪などは歴史記念館で見ることができ、古代から中世までの時の流れを一度に体感できる貴重な場所となっています。
岩崎城歴史記念館
館内の「岩崎城歴史記念館」では岩崎城の歴史、日進市の歴史や文化財産、城郭からの出土品などが展示されています。
特に小牧・長久手の戦いに関する展示は充実しており、当時の様子を詳しく知ることができます。
記念館では、甲冑の試着体験ができるイベントもあり、子どもから大人まで楽しめる工夫が施されています。
日本庭園
岩崎城よこには、日本庭園の跡がありました。
今は、枯れた水路の跡や礎石がのこっているだけですが、庭園内に水琴窟があり、美しい水琴の音を楽しめます。
四季折々の景色を楽しめる静かな空間で、城の見学の疲れを癒すのに最適です。
特に春の桜の季節は格別で、模擬天守と桜の組み合わせは絶好の撮影スポットとなります。
秋の紅葉も美しく、季節ごとに違った表情を見せてくれるのも岩崎城の魅力です。
施設情報
開館時間と休館日
- 開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、12月28日から1月4日
アクセス
- 名古屋市営地下鉄東山線・名鉄豊田線・藤が丘駅から日進市内循環バスくるりんばすで約15分、「遠太公園(えんたけぎち)」バス停下車、徒歩3分
- 名鉄豊田線・日進駅から日進市内循環バスくるりんばすで約12分、「岩崎」バス停下車、徒歩3分
- 名古屋市営地下鉄東山線・星ヶ丘駅から名鉄バス「長久手車庫」「愛知医大」行きに乗り約20分、「岩崎えんたけ口」バス停下車、徒歩3分
- 東名高速道路・名古屋ICから約10分(車)
駐車場について
私は車で訪れましたが、北側駐車場が便利でした。トイレも完備されており、安心して見学することができます。
南側駐車場は、5台分の駐車場があります。お城の正面から入ることができます。
しかし、入り口が民家の脇を高台に向かって進むためわかりにくい入り口になっています。
お車なら、北側の駐車場がおすすめです。
イベント情報
岩崎城では甲冑着用体験や岩崎城検定、アートセッションなど様々なイベントが開催されています。
また、マスコットキャラクター「にわさきくん」が出陣する日もあります。
訪問時期によっては、戦国時代を体感できる甲冑隊のパレードや、武者行列などの歴史イベントに出会えるかもしれません。
事前に公式サイトでイベント情報をチェックしておくことをおすすめします。
新しい道の駅「マチテラス日進」
岩崎城のある日進市では、2025年8月に新しい道の駅「道の駅マチテラス日進」がオープン予定です。
地元の特産品や飲食店が集まる新たな観光スポットとして期待されています。
岩崎城と合わせて訪れれば、日進市の魅力を存分に堪能できるでしょう。
オープンしたら早速見に行きたい場所のひとつです。
岩崎城見学のポイント
岩崎城を訪れる際は、1〜2時間程度の見学時間を見込むと良いでしょう。
まずは歴史記念館で岩崎城の歴史を学んでから、模擬天守へ上り、最後に城址公園を散策するというコースがおすすめです。
天守からの眺めは素晴らしく、晴れた日には周辺の景色を一望できます。
特に歴史好きな方は、小牧・長久手の戦いの激戦地として、当時の戦いの様子を想像しながら城跡を歩くと、より深く歴史を感じることができるでしょう。
また、城内には休憩スポットも設けられているので、ゆっくりと時間をかけて見学することができます。
四季折々の自然と共に城の歴史を堪能できる点も魅力です。
まとめ
岩崎城は室町時代に重要な役割を果たした城であり、特に小牧・長久手の戦いにおいては、その勝敗を左右する戦略地点としての役割を果たしました。
現在は城址公園として整備され、模擬天守や歴史記念館が建てられ、日進市の重要な歴史的財産・観光スポットとして親しまれています。
中世城郭の特徴である土塁や空堀、さらには古墳の遺構まで残る貴重な場所となっています。
岩崎城は、単なる観光地というよりも、戦国時代の熱い戦いの舞台を実感できる生きた歴史教材と言えるでしょう。
地元の小学生の社会科見学にも利用されるなど、教育的価値も高い施設です。
歴史好きはもちろん、自然散策や写真撮影を楽しみたい方にもおすすめの場所です。
四季折々の景色と共に、戦国時代のロマンを感じることができる岩崎城へ、ぜひ足を運んでみてください。
きっと新たな発見と感動が待っていることでしょう。
日進市の観光名所として、岩崎城は非常におすすめです!
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